子どもたちの発達支援をしていると頻繁に聞くワードがあったりする。
一時期ブームのようによく聞いた「ビジョントレーニング」もそのひとつなのだろう。
講演会やFAXがよく届いた時期があった。
もともと視能訓練士(オプトメトリスト)に、発達障がいがある児童へのビジョントレーニングについて教えてもらったこともあり、少し触れてみたいと思う。
目次
ビジョントレーニングって何するの?
ビジョントレーニングは、スポーツの分野やロービジョン(何らかなの原因で視力が弱いなど)、発達障がいと幅広い分野で取り組まれているようだ。私が学んだ分野で言えば、短期間であったが発達障がいにあたる。
そこでは主に
①目標物を一定時間視る注視
②上下左右斜めと動く目標物を追う追従性眼球運動
③目標物から目標物へ素早くピントを切り替える跳躍性眼球運動
④目を寄せ立体的に捉える両眼視
以上の4つを基本とし、それぞれ姿勢を正して、顔は動かさずに実施する。所要時間は5〜10分程度。
眼球運動を苦手とする様子としては、一定の位置に視線がいくとどこかに視線が飛んでしまったり、眉間にシワが寄ったりする。そうすると例えばその視線の先からボールだったりが飛んでくると、その子は見えずに取り損なったり、怪我に繋がってしまう恐れがあるわけだ。
ビジョントレーニングについて詳しくはyoutubeでも検索すれば出てくるのかな?興味がある方は見てみてほしい。
また、ここでよく混乱される方がいるが、ビジョントレーニングは視る力の向上を目指すものであること。単純に視力が良い悪い、遠くが見える見えないこととは別ものであるということだ。
目の動きだけじゃない!入力・出力・体の使い方!
・入力
例えば、目が見えるのであれば横断歩道を渡るかどうかは信号を見て判断していると思う(音を頼りにしてる人もいるかもしれない)
この場合、信号を「視る」というのが入力にあたる。
この入力を適切に行うために、眼鏡運動の基礎①〜④は当てはまると思う。つまり眼球運動に躓きがあると信号を見落としてしまったり、顔や体を傾けなければ見えないなど見辛さが問題になる。
・出力
続いて、信号が青なら歩いて渡ることを「判断する」。
これが出力にあたる。
横断歩道を渡る行為は、普段から行っているため当然のように感じると思うが、
例えば信号に紫や白が加わったのを想像してほしい。
紫は後ろ歩き、白はスキップで渡らなければならないとしたら頭の中で「ん?」と考えてしまわないだろうか。その頭の中で思った「ん?」からどう動けばいいか判断をつけるようにするのが出力の練習になる(わかりにくい例でごめんなさい!)
・体の使い方
出力されればそれでオッケー ♪ ではない。
「信号は白色だからスキップで渡る!」と出力したとしよう。
いざスキップ!が、なぜかスキップには見えない奇妙な飛び方で渡ってしまった‥。
この場合、入力と出力は成功したが、体を思ったように動かせないことで、結果失敗してしまっている。
ビジョントレーニングは、体の動かし方を含めて行うのが大切。
眼球運動をただ向上させれば、日常生活で困る事が減るわけではない。
せめてこの入力・出力・体の使い方はセットでチェックする必要があると思う。
また、出力、体の使い方が十分なら、信号を捉えるといった入力、眼球運動を底上げすることで、スムーズに解決する例もあるのだろう。
ただ実際はこれらのことに個々の特性や環境要因など様々なことを加味して、なぜ問題が起きているのか判断する必要があると思う。
ビジョントレーニングで楽になる人
読むことがどうしてもうまくいかず苦労している方は意外と身近にいたりする。
「ディスレクシア」という言葉を聞いた事があるだろうか?
知的には問題がないのに、本を読んだり、文字を書いたりすることに著しい困難な症状を現すことを指している。
私の経験上、ドクターからの診断がつかないまでも、読み書きを苦手としている方は本当に多かった。
そういった方々は、学生時代、読み書きが中心となる学習の中で大変苦労されて、自分なりの対策をとって乗り越えてきた方が多い。本当に辛いことだ。
読み書きが苦手な児童の眼球運動を確認すると、やはり苦手としている場合も多いように感じる。
ビジョントレーニングで完全に克服できるとは言えないのだろうが、少しは見辛さの軽減に繋がるのではないだろうか。
その他にも発達障がいやADHDなどの特性において、集中力が低ければビジョントレーニングの注視を活用したり、目標物を先走って追いかけ回したりしてしまう場合は、目標物の動くスピードに合わせてみたりする。
一人ひとりの様子を丁寧に観察することで、活用できる範囲は広いように感じる。
また、範囲が大きければビジョントレーニングでそれだけ楽になる人も多くなるのではないかと思う。
ビジョントレーニングのポイント
これは使い手の問題だと思うが、ビジョントレーニングはつまらなくなりがち(笑)
真剣に相手の目の動きを見ようとすると、ジッと黙り込んでしまったり
検査でもとってるのかってくらい堅苦しい(笑)
ポイントは、何より楽しく取り組める雰囲気を実施者が作り出すことだと思う。
小さい子だったら目標物をその子が大好きなキャラクターに置き換えてあげたり、
ゲーム式にしてワクワク感を与えたり、
一人ひとりがリラックスできる状態が何かを自問して改善していくことだ。
目の動きが苦手だと息が止まってたりもするが、呼吸をしながら行うことを勧めるといきなり寄らなかった目が寄ったりする。
楽しく、リラックスして。子どもたちからしたら、なんだか遊んでたら向上してたが理想なんだと思う。
最後に
私は近視で、小さい頃から病院で「目が悪い」「目が悪い」と言われ続けてきた。
そのせいで眼科が嫌いになった。
この経験は反面教師になっていて、ただでさえ自分では解決しようのない苦手感を抱く子どもたちに関わる際は、常に自分の言動に注意を払っている。
悪くいうのではなく、こういう道があると伝え支えられる人でありたいと思う。